【講座感想】「同性婚は差別解消の本当の道なのか」ー反婚の立場から当事者が見る同性婚の課題(講師:増岡広宣さん)を受講して

以下の講座を受講した佐々木春奈さんの感想です

インターセクショナリティ講座ーー差別で織られた社会をほどく(全10回)
第7回 7月5日(日)18:00〜20:00 講師:増岡広宣さん
「「同性婚は差別解消の本当の道なのか」ー反婚の立場から当事者が見る同性婚の課題」

今回の講座では,現在の日本の戸籍や婚姻制度にどのような問題があるのかという点とともに,同性婚や同性婚を求める運動がはらむ問題を,反婚・非婚の立場で運動をしてきた増岡さんから伺った.

左:司会の佐々木さん 右:講師の増岡さん

印象的だったのは,運動は,婚姻制度がセクシャルマイノリティを受け入れてくれるようにと哀れみを乞うのではなく,セクシャルマイノリティが婚姻制度を受け入れてあげることができるかを軸に持つべきであるという話だった.婚姻制度は昔から,異性愛中心主義や家制度と結びつくことで,女性,セクシャルマイノリティ,外国ルーツの人など多くの人々を抑圧してきた.現在でも婚姻制度は法的な婚姻関係にある者だけに相続権や税制優遇措置を認め,同性カップルや事実婚を選択した人,婚姻とは異なるケア関係を結んでいる人たちをその保護の範疇から排除している.このような差別的な制度に自身を入れてくれるよう求めるのではなく,婚姻という制度そのものを批判的に考えること,婚姻関係・家族関係を前提にしない個人への権利の付与や婚姻の特権性の解体など新たな社会のあり方を模索することが,あるべきセクシャルマイノリティの運動の姿なのではないかという問題提起だった.

私はそもそも結婚や婚姻制度について深く考えたことがなかったため,婚姻制度がこれほど抑圧的・差別的な制度なのかということに単純に驚いた.さらにそのような抑圧的制度な婚姻制度が,指摘されると抑圧的であることに気づくのだが,そうでないと当たり前のものとして受け入れられていることに驚いた.そしてここに,同性婚が徐々に支持を集めてきている一方で,反婚・非婚という立場が普及しない原因があるのではないかと感じた.


同性婚は分かり易い.同性婚はこれまでマジョリティが享受してきた特権にマイノリティを組み込むことであり,婚姻制度そのものや社会保障,税制度などの大幅な変更も必要ない.マジョリティ側が自分の特権を壊されることなく,制度そのものについて深く思考することなく,容易に想像し実現することのできる仕組みである.


一方で反婚・非婚は分かりにくい.婚姻制度を批判するためには,異性愛規範や家制度,戸籍制度,家父長制,天皇制など様々な歴史的・社会的・思想的背景を理解する必要がある.そして婚姻制度の特権を解体するとなると,社会保障,税制度などの変更が必要になる.今まで婚姻制度が当たり前過ぎたが故に,マジョリティにとっては婚姻によらないケアの関係,新しい社会の形を想像することが難しく,現実味のないものに聞こえてしまう.「当たり前」を疑うことは自由への第一歩である一方で,思考力と時間をたくさん使う.マジョリティにとってそこまでの思考力と時間を婚姻制度の是非にかけることにメリットがないからこそ,分かりやすい同性婚が普及する一方で,難しい反婚・非婚の立場の主張がなかなか浸透していかないのではないかと思った.


しかしそれでは誰もがより自由に生きられる新しい社会を作るという負担を,マイノリティ側が引き受け続けることになってしまう.婚姻を前提としない社会制度や暮らしのあり方は全ての人に関わることであり,本来ならば新しい社会を作るために全ての人が自分の思考力と時間を使って取り組むべきことだと思う.


差別的・抑圧的制度への迎合ではなく,制度の解体へ.異性愛規範に基づき同性婚に反対する人もいる中で,婚姻制度自体を批判することは容易ではないと思う.しかしその先にある自由に向けて,私自身も,地道にできることに取り組んでいきたいと思った.

終了後は、赤羽にある新天心さんの本格的な中華料理で懇親会を開催しました

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