【感想】労働を問い直すージェンダーと民主主義の視点から 第4回「中国のセックスワーカー運動とフェミニズム」スタッフ感想

ふぇみ・ゼミでリアルタイム字幕校正を担当している、スタッフの雁屋優です。

「労働を問い直す」連続講座第4回、遠山日出也さんによる、「中国のセックスワーカー運動とフェミニズム」の感想をお伝えします。

そもそも何でフェミニズムの場でセックスワークの話なのかと疑問をお持ちの方もいらっしゃるかもしれません。しかし、セックスワーカーの問題を考えることは、女性の困難、そして社会に存在する差別を解決するのに欠かせません。

取締強化でセックスワーカーの危険は増す

中国において、改革開放後、市場経済が導入されたことにより、表向きには姿を消していたセックスワークが復活しました。

復活といっても、決してそれが公的に認められたわけではありません。

1979年に制定された刑法においては、売買春の組織または他人への売春の強制を行った者を罰する法律があり、死刑もありえました。

中国のセックスワーク取締の主な問題点は、セックスワークの定義が不確かで範囲が広いこと、そしてセックスワークの組織と強制を並べて罰する構造になっていることです。

セックスワークの定義が不確かで広いため、取り締まる警察官はじめ権力の側が恣意的に制度を運用することや、黙認を盾に金銭を脅し取ったり強姦したりする事態が実際に起こっています。

刑法が売買春の組織を禁じているため、セックスワーカーは単独、あるいは単独に近い形態で働かなければなりません。それは、暴力や殺人の被害に遭う危険を増す行為です。また、このような状況ではコンドームの使用も困難になり、健康も脅かされます。

セックスワークをする背景には農村と都市部の経済的格差や性差別があると調査研究で明らかになっていますが、中国では2019年までセックスワークをしていた人々を裁判なしで勾留し無報酬の労働をさせる収容教育制度が存在しました。

中国各地で連帯するフェミニストたち


農村出身の女性が仕事の最中に3人の役人に強姦されそうになり、役人を死傷させた鄧玉嬌事件をきっかけに、中国のセックスワーカー運動とフェミニズム運動は連帯して活動していきます。

警察による弾圧も厳しいなか、さまざまな形の運動が繰り広げられていく様子は、圧巻としか言いようがありません。

セックスワーカー運動をしている人が連行され、拘束されるまでに発展しますが、それでも、セックスワーカー運動とフェミニズムは消えていません。

翻って、日本でフェミニズムを学ぶ私は、中国のフェミニストのようにセックスワーカーのことを知っているだろうか、セックスワーカーの困難を忘れていないだろうか、と問い直すきっかけになりました。セックスワークは女性だけの問題ではありません。

セクシュアルマイノリティや貧困といった他の社会問題にも大きく関わっています。セックスワークの問題を無視してフェミニズムを語ることも、実践することもできません。インターセクショナリティの視点を持ち、これからも学んで、実践していきます。

こちらの講座は後から配信もありますので、ぜひこちらからお申し込みください。
気になる回だけの受講も、全回通しての受講も可能です。

「労働を問い直す」シリーズの第5回は、11月17日、セックスワーカーの健康と安全のために活動する団体SWASHの代表をつとめる要友紀子さんに「社会政策は労働政策ではない(平等権、自由権、社会権の保障でもない)」と題し、来年施行される困難女性支援法の抱える問題点についてお話しいただきます。ぜひご参加ください。

この記事を書いた人
雁屋 優(かりや ゆう)
ライター/サイエンスコミュニケーター(2023年度北海道大学CoSTEP受講生)。
2015年に指定難病となったアルビノ(眼皮膚白皮症)当事者。
難病や希少疾患の人々の自己決定を支える情報が圧倒的に足りていないことに問題意識があり、現状を変えるべく文筆業をしている。
明石書店のwebマガジン、webあかしで「マイノリティの「つながらない権利」」、現代書館noteにて「マイノリティのハローワーク」連載中。

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