【第6回ふぇみ・ゼミ】スタッフ感想

ふぇみ・ゼミスタッフのSです。

10月20日(水)U30第6回では、講師に兼子歩さんをお呼びし、 「『インセル』『有害な男らしさ』とインターセクショナルな批判的男性性研究」というテーマで講義をしていただきました。久しぶりにハイブリッド開催をすることができ、私はオンラインでの参加でしたが会場の写真からはとても楽しそうな様子が伝わりました。

講義は、まず有害な男性性(toxic masculinity)とは何か、そして第二波フェミニズム以降のアメリカの状況について学びました。その後、有害な男性性の究極形態としてのインセルについて、その主張とそこに存在する構造を読み解き、さらにはインセルそのものではなくインセルの論じ方の問題点についても考えました。

インセルとは、involuntary celibacy(=非自発的な禁欲状態)の略で、現在使用されている意味では、異性愛主義・シスジェンダーの男性で女性との恋愛及びセックスを欲しているが、それがかなわない状態にあり続けている者のことを指します。有名な事件としては、2014年5月にカリフォルニア大学サンタバーバラ校近くで22歳の男性エリオット・ロジャーが銃乱射をした事件があります。ロジャーがウェブ上に掲載した犯行直前の文章には、女が自分に惹かれなかったことへの怒りなどが書かれていました。

今まで私はインセルが起こすこのような事件について、自分がモテないからといって殺人まで犯す狂った人、異常な人の話であるというふうに捉え、どこか自分とは遠い世界の話であると考えてしまっていた部分がありました。インセル個人のメンタルヘルスの問題であるというふうに問題を小さくとらえてしまっていた部分もありました。しかし今回の講義を受けて、インセルには虐げられた被害者であるというアイデンティティやフェミニズムを嫌悪するという共通点があり、そこには強制的な異性愛主義や人種主義(女性へのアクセス権は白人男性のみの権利であるという考え)、女性の性的物象化の正当化、男性は女性のセクシュアリティにアクセスする資格があるという考えなどがあることが分かりました。これらは、現在の日本社会にも根深く存在する規範であり、またさまざまな差別の加害者の主張と共通している部分があるとも感じました。インセルやその反乱について、その背景にはどのような社会構造があるのかという視点から見ていく必要があるということに気付くことができました。今年8月には小田急線で男性が刃物で乗客を切りつけた事件がありましたが、日本におけるインセルについても考えてみようと思いました。

次回の講師にお呼びするのは後藤悠里さん、テーマは「障害女性の置かれている状況」です。今回の講座では参加者から、インセルは有色人種や黒人の女性をどのように捉えているのかという質問がありました。全く魅力がないとみなすか、逆に性的な欲望の対象としてより物象化して見ているのではないか、いずれにしてもインセルが奪い合いの対象としているのは白人の女性であるとお答えいただきました。この部分を聞いて、障害女性のなかには性的被害を受ける人が少なくない一方、性を持っていることを無視した扱いも受けるという問題と繋がる部分があるのではないかと考えたりもしました。次回の講座もとても楽しみです!すでに6回が終了しましたが、まだまだ申し込みを受け付けております。既に開催された講座の後から配信もございますのでPeatixよりぜひお申し込みください!

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