【講座感想】「女性の立つ場に交差する困難ー占領下沖縄から現在までー」(講師:謝花直美さん)を受講して

以下の講座を受講した定形一輝さんの感想です

インターセクショナリティ講座ーー差別で織られた社会をほどく(全10回)
第9回 8月2日(日)16:00~18:00 講師:謝花直美さん
「女性の立つ場に交差する困難ー占領下沖縄から現在までー」

左:司会の定形さん 右:講師の謝花さん

 第二次世界大戦末期の沖縄における地上戦、米軍占領期、復帰運動、そして日本復帰後の現在まで続く米軍基地問題。沖縄の歴史を語る主体はいつも男性で、女性をはじめとしたマイノリティの存在は周縁化・客体化されてきた。しかし戦後の沖縄には、多くの戦争未亡人がおり、社会の荒波に巻き込まれ、さまざまな矛盾を抱えながら懸命に生活してきた女性たちがいた。その姿を、ジャーナリスト・研究者として沖縄戦後史に関わってきた謝花直美さんが、戦後初の女性記者・伊波圭子の生き様を通して明らかにしてくれた。謝花さんの語りからは、同じ女性記者として差別や葛藤をくぐり抜けてきたからこその、伊波への強い敬意と連帯が感じられた。
 1950年代、月刊タイムス誌に属していた伊波は、戦争で家族を失い、配給に頼りながら「パンパン」として生き延びてきた未亡人たちを中心に取材した。唯一の女性記者だった伊波が、彼女たちの切実な生きざまに向き合い、声なき声を読者に届けようとしていた足跡が見て取れる。伊波自身も社内で強い風当たりを受けていたはずであり、彼女たちへの共鳴と使命感を持って取材していたのではないだろうか。
 伊波が経験した苦難と抵抗は、時代を下って謝花さん自身の取材にも引き継がれていた。米軍統治下の復帰運動、そして1995年の米兵による少女暴行事件を契機に8万5,000人が結集した「島ぐるみ大会」。こうした抗議運動の内幕でフェミニズム的視点が欠落していたことは、今回指摘されるまで思い至らず、ハッとさせられた。性暴力によって奪われた個人の尊厳回復が後景化され、被害が基地反対運動の「ガソリン」として捉えられがちであったことは衝撃的であった。
 しかし、米軍基地が集中することによる構造的暴力を訴える女性たちの小さな運動は繰り返され、着実に共感を広げていった。その姿を取材した謝花さん自身も、報道局内で軋轢を経験する。当初は、基地反対運動の内部に女性の人権という視点が乏しく、男女で温度差があることを指摘する謝花さん単独の記事になる予定だった。しかし男性上司への配慮から「両論併記」に変更されたという。この経験から謝花さんは、伊波をはじめとする先輩女性記者たちと、自分も同じ場所で闘ってきたのだと振り返った。その語りからは、静かだが確固たる連帯の意思と、そのバトンを引き継ぐ記者としてのプライドが感じられた。
 謝花さんの視点を受け取った現代の私たちに何ができるのか。自らが携わる社会運動の内部にも、常にインターセクショナルな差別構造が存在することを認め、自己点検を怠らないことではないだろうか。「連帯」という言葉は簡単に口にできる。しかし、それが個別の痛みを押し殺す暴力に変わることもある。今回のような話を繰り返し聴き、自分が誰の足を踏んできたのかに自覚的でありたい。

終了後は、参加者・運営委員・スタッフで懇親会を開催しました。