【感想】労働を問い直すージェンダーと民主主義の視点から 第5回「社会政策は労働政策ではない(平等権、自由権、社会権の保障でもない)」 スタッフ感想
皆さんこんにちは。ふぇみ・ゼミでリアルタイム字幕校正を担当しているスタッフの雁屋優です。「労働を問い直す」講座の第5回、要友紀子さんによる「社会政策は労働政策ではない(平等権、自由権、社会権の保障でもない)」の感想をお届けします。2024年から施行される困難女性支援法の問題点について、私もいくらか聞いたことはありますが、詳しいわけではありません。要さんの丁寧な説明で、法律の問題点やセックスワーカーの人々が置かれている状況への理解を深めていく時間となりました。
セックスワーカーを守る法律は存在しない
現在の法律にも、マイノリティを守るためのものが不十分ながら存在します。障害者差別解消法はかなり有名かと思います。しかし、そういった差別から守る法律が存在しないマイノリティもいるのです。
アディクション(依存症)のある方、HIV陽性者や患者、セックスワーカーなどといった属性の人々の人権のための法律は存在していません。セックスワークを取り締まる法律はあるのに、人権を守ってはくれません。セックスワーカーは、法律上、労働者としてちゃんと扱われていないのです。
この社会がセックスワーカーへの偏見に満ちていることは疑いようもない事実です。それはコロナ禍においてより顕著になりました。そんななか、いろいろな問題のある困難女性支援法が成立し、来年から施行されることになっています。
福祉的救済ではなく、文化的な生活を保障される社会へ
要さんは困難女性支援法の問題をいくつか挙げてくださいましたが、私が忘れられないのは、インターセクショナリティの視点が抜け落ちているという指摘です。女性はただ女性であるのではなく、シングルマザーであったり、トランスジェンダーであったり、障害があったりします。そのことにこの法律は目を向けきれていないのです。
問題の多い困難女性支援法ではなく、他にどのような制度や法律が適切な政策になりうるのか、考えるヒントをたくさんいただける回でした。
要さんの「清貧ではいけない。映画や旅行、飲み会に行ける文化的な生活が当たり前になるべき」との言葉に、私は深く頷いていました。人間は生きてさえいればそれでいいわけではないのですから。文化的な生活が指すものはどんどんひどいことになっている今だからこそ、具体的に考えるべきです。
さらに、要さんは資本主義がいかに人々の分断を作ってきたかもお話してくださいました。非常に興味深いお話で、新しい視点をいただきました。資本主義のどこがよくないか、言葉にしきれていない私には世界が広がる瞬間でした。
こちらの講座は後から配信もありますので、ぜひこちらからお申し込みください。
気になる回だけの受講も、全回通しての受講も可能です。
「労働を問い直す」シリーズの第6回は、12月15日にほんまなほさんによる、「大阪・釜ヶ崎、クィア、そしてパフォーマンス労働について」を予定しています。変貌を遂げる釜ヶ崎でのクィアコミュニティや労働、ケアについて考えます。ぜひご参加ください。
この記事を書いた人
雁屋 優(かりや ゆう)
ライター/サイエンスコミュニケーター(2023年度北海道大学CoSTEP受講生)。
2015年に指定難病となったアルビノ(眼皮膚白皮症)当事者。
難病や希少疾患の人々の自己決定を支える情報が圧倒的に足りていないことに問題意識があり、現状を変えるべく文筆業をしている。
明石書店のwebマガジン、webあかしで「マイノリティの「つながらない権利」」、現代書館noteにて「マイノリティのハローワーク」連載中。