【感想】労働を問い直すージェンダーと民主主義の視点から 第2回 おざわじゅんこさん「イギリスの看護師職員団体がストライキに動いた背景と課題」

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ふぇみ・ゼミスタッフの雁屋優です。

今回は、ジェンダーと民主主義の視点から労働を問い直す連続講座の第2回、おざわじゅんこさんによる、「イギリスの看護師職員団体がストライキに動いた背景と課題」の感想をお伝えします。

日本ではストライキを見ることすら珍しく、先日8月31日の西武・そごうの西池袋本店で行われたストライキも大手デパートとしては約60年ぶりで、ストライキが労働者の権利であることすら解説が必要なありさまです。

また、日本においては労働三権に制限をかけられている職種が諸外国よりも幅広く、独立行政法人、つまり大学病院などに勤める医療従事者はみなし公務員とされ、ストライキを含む労働者の権利が制限されています。

このように、日本とイギリスでかなり状況は違っていますが、おざわさんにイギリスの看護師職員団体のストライキやその背景をお聞きし、共通する部分も多いことを知りました。

イギリスで医療を提供するNHS(National Health Service)は、公的な予算によって運営されています。

NHSはイギリスに住んでいる誰もが利用するサービスでありながら、人種差別、性差別をはじめとする差別の問題を抱えており、黒人女性は白人女性の5倍も出産で亡くなっていることが明らかにされました。

雑に扱われた経験から医療やケアから遠ざかってしまう、ケアの質も悪くなり誤診や病気の発見が遅れるといったことが原因です。差別は人を殺すのです。

差別で人は死ぬ NHSが抱える「差別」という病巣

日本もイギリスも高所得国に分類され、出産における死亡率は世界的にも低く、安全に出産できる国といえますが、そんな場所であっても、周縁化されることで殺されうるのです。その事実はとても重く、目を背けてはなりません。

誰のための、何のための、ストライキか

差別の他にもNHSが抱える問題は多く、それゆえにおざわさん達はストライキを決行したそうです。

NHSが抱える数多くの問題に苦しめられているのは、労働者であり、ひいてはケアを受ける患者なのだとおざわさんは強調しておられました。

労働環境の悪化はそのまま提供されるケアの質の悪化につながっていくのです。

おざわさん達のストライキ労働する自分達、ひいては患者に満足なケアを提供するためのものなのだと、身にしみました。

看護師のほとんどを女性が占めているのは日本もイギリスも同じですが、日本では男性は助産師になることができません。

そのため、日本において、看護師や助産師の待遇改善はよりジェンダーと密接に関わってくるといえるでしょう。

医療やケアの労働をジェンダーと民主主義の視点から問い直す必要を強く感じました。

こちらの講座は後から配信もありますので、ぜひこちらからお申し込みください。NHSが抱える他の問題や、ストライキの課題もじっくり学ぶことができる講座になっています。気になる回だけの受講も、全回通しての受講も可能です。

「労働を問い直す」シリーズの第3回は渡邉琢さんによる、「障害者自立生活運動とケア労働」です。

医療やケアにおいて、女性や人種マイノリティの人々のみではなく、障害者も周縁化されています。

重度障害者の暮らしの自由は大切だけど、ケア労働者の待遇も決してよくはない現状もあります。

そこに対して何ができるのか、どんなことが必要か、講座を通して一緒に考えていきましょう。

この記事を書いた人

雁屋 優(かりや ゆう)

ライター/サイエンスコミュニケーター(2023年度北海道大学CoSTEP受講生)。

2015年に指定難病となったアルビノ(眼皮膚白皮症)当事者。

難病や希少疾患の人々の自己決定を支える情報が圧倒的に足りていないことに問題意識があり、現状を変えるべく文筆業をしている。

明石書店のwebマガジン、webあかしで「マイノリティの「つながらない権利」」、現代書館noteにて「マイノリティのハローワーク」連載中。

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