【感想】今さら聞けない!講座VOL.1(第1回)

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ふぇみ・ゼミ広報スタッフのUです。

多彩なテーマを1回ずつ扱う「いまさら聞けない!基礎講座」(vol.1とvol.2合わせて計10回)が5月から始まりました。

第1回の講師はふぇみ・ゼミ運営委員の梁・永山聡子さん。テーマは「私たちはなぜ『慰安婦』問題を語りにくいのか?」でした。後半の活発な質疑応答を含め、濃密な内容でした。

「なぜ語りにくいのか」という問題

「語りにくい」理由として、梁・永山さんは次の3点を指摘します。

(1)日本軍の一連の性暴力を理解するには、多くの知識と時間が必要だとされていること。=専門性(権威)主義の問題
(2)昔、日本国家のやったことをなぜ、自分が考え、行動しなくてはいけないのか?=歴史と自分との距離感の問題
(3)あんなに辛い経験をした人が大きな声で社会に訴えることなんてできないんだから、金欲しさに、嘘を言っているはずだ=性差別/民族差別/レイプ神話の問題

これに対し梁・永山さんは(1)「日本軍」の研究ほどの専門性は必要としていないこと、(3)被害者についてのイメージが貧困すぎる、「弱者イメージ」を勝手に思い込んでいるのでは、と指摘します。そして(2)については、かつては長い時間をかけて正面から議論してきたが、最近はあえて他の枠組みからアプローチすることで、日本軍「慰安婦」問題を学ぶことを促している、と語りました。

具体的に試みているアプローチは

(1)ジェンダー構造の問題として

「自分の生きている社会が、性差別にどう立ち向かうのか?という問題でもあります」

(2)日本社会の階級構造の源泉として

「自分の生きている社会が、どのような仕組みで今の社会を作っているのかを考えるうえで、日本軍「慰安婦」問題は大きな学びを与えてくれます。日本軍「慰安婦」問題を研究しなかったら、わたしは日本社会の構造を1/3程度くらいしかわからなかったのではないかと思います」「もしいま理不尽な思いを持っている人がいたら、その問題の源泉を知るうえで日本軍「慰安婦」問題は有効だと思います」

(3)自民族中心主義の問題として

「トランスナショナルなフェミニズム、インターセクショナリティなフェミニズムを学ぶための基本として、日本軍「慰安婦」問題を研究することは有効です」

「現代との地続き性」を強調しすぎることのマイナス面

しかし、このような実践例を紹介したうえで、梁・永山さんが次のように語ったことが私には印象的でした。

「日本社会の側があまりに硬直化して、日本軍「慰安婦」問題を理解しないなか、(問題を訴える側が)『現代の性差別・性売買問題と同じだよ』『この問題と地続きなんだよ』と言い過ぎたために、日本軍『慰安婦』問題が本来持っている醜悪さ、蛮行さなど(への関心)が薄まっている気がするのですね」

多くの学生に接し、この問題の共有に努めている梁・永山さんが抱える葛藤が伝わってきました。広範な問題共有を目指しながら、この問題の固有性を見失わないようにすること。今回の講座では「基礎知識」だけではなく、そのような実践的な問題意識も、多くの参加者に共有されたように思います。

関連しますが、後半の質疑応答では参加者から次のような質問がありました。

「よく言われるのが、『セックスワーカーとして、金が欲しくて仕事とした人が大部分で、被害者として名乗り出ればお金がもらえると思って名乗り出ているのだ』という意見です。本当にげんなりとします。梁・永山さんならどう返しますか……低次元な話ですみません」

これに対し、梁・永山さんは「これは低次元の問題ではないでいよ」と前置きしたうえで「『まず日本軍のことをちゃんと勉強しましょう』ということだと思います。現代日本のセックスワーカーと同一視すると問題を見誤るということです。日本軍「慰安婦」問題と現代日本のセックスワーカーをめぐる問題は似て非なる問題なのです」と応答しました。

 個人的には、ここで「日本軍」という暴力機構・組織の存在が浮かび上がってきたように思いました。ひたすら侵略や植民地征圧という暴力のために機能し続けた日本軍の醜悪さ・蛮行の酷さについて、戦後日本社会がちゃんと向き合い、責任を追及していたら、日本軍「慰安婦」問題についての無理解や曲解もここまで大きくならなかったのではないでしょうか。

被害者を「保護する対象」と決めつけないこと

後半の質疑応答では、いくつも重要な五輪がありました。その中から1つを紹介します。

質問は「被害に遭った方を『保護する対象』として認識してしまうと、どんな風に問題を見誤まったり、変なことが起きてしまうのでしょうか」というものでした。

梁・永山さんは次のように応答しました。

「日本軍『慰安婦』問題では(そのほかの性暴力被害においても)、本人たち当事者は「自分の責任だったのではないか」と自分を責めてしまうのですが、しかし、たとえば宋神道さんのように、「最も大きいのは自分の責任ではなくて社会的構造の問題、日本軍の問題、女性差別の問題、民族差別の問題だ」という認識に達して、ものすごいパワーを得て本人が社会の主体になっていったわけですね。にもかかわらず「かわいそうな被害者」というとらえかたでいると、既に前に踏み出した本人の姿とはズレが生じてしまうわけです。多くの当事者の聞き取りをされていた川田文子さんのように、本人たちの人間性と主体性をみることが重要だと思います」

この講座は、9月10日までの申込で録画視聴が可能です。

今回のメインとなる「日本軍『慰安婦』問題の基礎知識」については、ぜひ録画でご確認ください。

「いまさら聞けない!基礎講座」はこの後もアクチュアルなテーマが目白押しです。次回は「セックスワークと人身取引 -二分法を越えて」というテーマで青山薫さんを講師にお招きします。

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