【第2回ふぇみ・ゼミ】スタッフ感想

ふぇみ・ゼミスタッフのRです。

6月15日(水)第2回U30の講師は、ジェンダー論・ジェンダー史がご専門の金富子さんでした。今回は、「なぜ朝鮮人『慰安婦』は字が読めなかったのか 〜民族・階級・ジェンダーの交差から植民地教育を考える〜」というテーマでお話いただきました。朝鮮植民地期の教育は金富子さんの研究の出発点だったそうです。日本の歴史教育では扱われない、植民地支配下の朝鮮人女性の識字率の低さにはどのような要因があったのかを学びました。

金富子さんの最初の問題意識は、植民地期の朝鮮人就学率や入学率の平均というような従来の研究において、朝鮮人女性たちの経験が見落とされているという点にあったそうです。そこから、当時の公立普通学校への入学率をジェンダー化(男女別に算出)し、逆に不就学率に注目することで、不可視化されてきた女性たちの経験を明らかにしようとしたのです。これらのデータから明らかになったのは、朝鮮における女性の男性に対する慢性的な不就学率の高さです。

次に金富子さんは、上記のデータをジェンダー/民族/階級という社会関係の要因から説明されました。民族要因としては、そもそも学校制度自体が在朝日本人と朝鮮人の間に差を設けていたことが挙げられます。階級要因としては、朝鮮人に課せられた授業料が日本人の2倍であったケースや、朝鮮を食糧供給基地として農民の貧困化が総督府によって進められたことが挙げられます。ジェンダー要因としては、教育自体が男子を対象としていたこと、民族/階級という社会関係が男性中心的に構築されていたことが挙げられます。これら3つの要因も年代ごとに変化しながら植民地支配の土台となり、最終的には日本軍性奴隷制度を可能にしたのです。

今回の講座で印象的だったのは、いかに個別の社会関係が独立して存在していたのかではなく、互いにどのような作用があったのかを丁寧に分析されていた点でした。例えば、日本による植民地権力が実質的には女性の教育を放置していたこと、朝鮮人の就学率を上げる運動も家父長制を内包していたことは、女性の就学率の低さという結果を導く「意図せざる共犯関係」にあったのです。そして後者の朝鮮社会の家父長制は、朝鮮総督府の家父長制/植民地主義に従属していたという点が重要だと指摘されていました。

また、それまで男性を標準の研究対象としてきた歴史学に対し、金富子さんの研究はいかに研究対象や手法も男性中心に構築されてきたのかを批判的に捉え直すきっかけになるものであったと感じました。

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