2010年代の「LGBTブーム」以降、主流メディアにおける性的マイノリティ関連の報道等は増え、また、少なくとも地方自治体レベルでは、部分的で限定的なものとはいえ、性的マイノリティの権利保障に向けた制度づくりが進んでいます。こうした「メインストリーム化」は、性的マイノリティの生存を可能にするために大切なものです。と同時にそれは、既存の制度や社会構造を大きく変えない範囲でしか進められないことも多いという問題があります。

 本講座では、そうした問題を重視する立場から主張や活動をしてきた方々をスピーカーにお招きし、現在進行しているメインストリーム化によって性的マイノリティ間にどのような格差や不平等が生じ始めているのかや、メインストリーム化の背後でどのような差別構造が強化されつつあるのかについてお話を伺います。「いまある社会」のラディカルな変更を求めていく時、私たちは社会のどこに目を向け、何に注意を払っていく必要があるのか、改めて考えてみたいと思います。

*本イベントは、2021年度年間パスポート(通称「ふぇみ・ゼミパスポート」)対象イベントです。年間パスポートの購入はこちら(https://2021femizemiu30.peatix.com/view)。

年間パスポートを購入している方には、当日のZoom情報が自動的に届きます。

*「U30受講生」とは、30代以下のことを指しているのではなく、ふぇみ・ゼミの若者対象講座、「U30」の受講生のことを指しています。U30の受講生になると、他の講座を割引価格で受講できるだけでなく、様々な特典がありますので、これを機にご検討ください。詳細はこちら(https://femizemi.org/introduction/benefits/)。

お申し込み

https://queer.peatix.com/

スケジュール

金曜19:00〜21:00

【第1回】

日時:2022年1月21日 19:00~21:00

『日本社会と性的マイノリティの〈包摂〉の限界――家族・市場・国家』
講師:堀江有里(ほりえゆり)さん
日本基督教団牧師(京都教区巡回教師)。信仰とセクシュアリティを考えるキリスト者の会(ECQA)代表。清泉女子大学・明治大学ほか非常勤講師。専門は社会学、クィア神学。主著に『レズビアン・アイデンティティーズ』(洛北出版、2015年)ほか。共編著『クィア・スタディーズをひらく2――結婚、家族、労働』(晃洋書房)近刊予定。
<内容>

2010年代以降、日本社会では「性の多様性」が称揚される流れが広がっています。しかし、1990年代から性的マイノリティの相談業務に従てきた立場からみると、状況は良くなってきているのか、疑問に思うこともあります。日本社会でめざされているのは誰のどのような「多様性」なのか。その背後で進行している格差の問題や、家族政策の背後で差別の温存装置として守られつづける天皇制の問題についてもあわせて、ご一緒に考えてみたいと思います。

【第2回】
日時:2022年2月4日 19:00~21:00
※変更
講師:飯野由里子
研究センター勤務。多様性と社会正義に関する教育コンテンツの開発・実施に従事する傍ら、フェミニズム理論、障害理論、クィア理論を行ったり来たり、くっつけたり混ぜ合わせたりする研究をしています。『レズビアンである〈わたしたち〉のストーリー』(生活書院 2008年 単著)の他、『合理的配慮ーー対話を開く、対話が拓く』(有斐閣 2016年 共著)や『クィア・スタディーズをひらく 1−−アイデンティティ、コミュニティ、スペース』(晃洋書房 2019年 共編)を出版している。
<内容>
クィアの政治の特徴のひとつに、メインストリーム(主流)に同化しないという意味での「反同化主義的スタンス」があります。そこでは、「ノーマル(普通)」とは目指すべき位置ではなく、異議申し立ての対象となる特権な位置として理解されます。こうした立場から、2010年代以降、日本で起きているLGBTのメインストリーム化に焦点をあて、その特徴と問題点を整理します。

【第3回】
日時:2022年2月18日 19:00~21:00
『私が理想とする世界とは全ての人が苦行者のように、』
講師:吉野靫(ゆぎ)さん(*オンライン開催)
学生時代は自治会に所属し、学費値下げ運動とジェンダー・セクシュアリティに関する活動に傾倒。医療事故と裁判をきっかけに立命館大学先端総合学術研究科に編入し、トランスジェンダーに関する論文執筆や企画開催を開始する。日本学術振興会特別研究員DC2、PD、立命館大学専門研究員を経て現在。クィア、ノンバイナリー。著書に『誰かの理想を生きられはしない とり残された者のためのトランスジェンダー史』(青土社、2020)
<内容>
2006年、身体改変の過程で医療事故に遭い、2010年まで原告として生活した。様々なバッシングがあったが、私の「女性にも男性にも帰属感を持たない」というスタンスがその一因となったことは明らかだった。女性・男性のどちらかに同化する「性同一性障害」当事者の認知が中心だった当時、弁護士や裁判官にもトランスジェンダーについて理解してもらう必要があった。どのような困難を抱え、どのような工夫をしながら裁判をたたかったのかを振り返る。

【第4回】
日時:2022年3月4日 19:00~21:00
『「地方」の性的マイノリティ:東北インタビュー調査から』
講師:前川直哉さん・杉浦郁子さん
前川直哉(まえかわ・なおや):1977年生。神戸の私立高校教員を経て、2014年に福島県福島市へ転居。非営利の学習支援団体を立ち上げる。2018年4月より福島大学特任准教授に就任。 研究上の専門は、ジェンダー/セクシュアリティの社会史。 著書に『〈男性同性愛者〉の社会史』(作品社)、『男の絆』(筑摩書房)など。
杉浦郁子(すぎうら・いくこ):1969年生。和光大学現代人間学部教授。論文に「1970年代以降の首都圏におけるレズビアン・コミュニティの形成と変容」『クィア・スタディーズをひらく1』晃洋書房(2019)、「制度との応酬によるニーズ認識:同性カップルの法的保障ニーズをめぐって」『和光大学現代人間学部紀要』12(2019)など。
<内容>
当事者を中心とする性的マイノリティ団体の活動をめぐっては、「進んでいる東京(大都市)/遅れている地方」といった単純化された二項対立の図式が示されることもある。だが、この図式は正当だろうか。ここでは私たちが行った東北地方の性的マイノリティ団体スタッフへの調査について報告し、活動の多様性や柔軟性などを明らかにする。また個々の活動の背景に、東京など大都市における活動とは異なるロジックや合理性が存在している可能性についても考える。

【第5回】
日時:2022年3月18日 19:00~21:00
『私の怒りを盗むな 〜ギャラリーにデリヘル呼ぶ企画でデリヘル嬢が物申したら~ 』
講師:げいまきまきさん
女優パフォーマー元セックスワーカー セックスワーカーの働く安全と健康を応援する団体SWASHのメンバー。 演劇やダンス、パフォーマンスへの出演や作成。 中韓日の作家から成る「刷音」のメンバーとして出品した映像作品 https://sure-inn.com/ (後ろから2番目「たなびくマグマ」)
<内容>
2016年、芸大のギャラリーが展示ワークショップで 「デリヘル(性風俗の一種)を呼ぶ」を企画した。 私は当日に急遽、セックスワーカー「参考人」として呼ばれ話し合った。 「対話」で気づいた不均衡。他人を「例題」として消費すること。 最近はアートの分野でもハラスメントやジェンダー格差が問題視されていますが、 私は正直なところ、少し冷ややかに見てしまう事も。 周縁からの狼煙のような内容になればいいなと願っています。

参加方法

●オンラインもしくはハイブリッド(covid-19の感染状況に応じて随時変更致します。ご了承ください);ハイブリッドの場合、会場は東京都内になります。

●「後から配信」あり

※当日、開始1時間前を目処にZoomの情報をお知らせします。
Zoom入室の際には、必ず登録いただいたお名前でご参加くださるようお願いいたします。

※リアルタイムでの参加が難しい人のために「後から配信」も行います。
講座開催後、1週間以内に録画を観るためのURLを共有いたします。

※チケットの販売は、それぞれの講座開始1時間前までとさせていただきます。
それまでにお申し込みの方のみ、Zoom情報を提供します。それ以降のお申込みの方は、
「後から配信」にてご視聴いただく形になり、Zoomの情報は送信できかねます。
ご了承ください。

お申し込み

https://queer.peatix.com/