ニュースリリース:中国・山西省 日本軍性暴力被害者遺族、山西省高級人民法院に日本政府を提訴
2024.4.19
一般社団法人ふぇみ・ゼミ&カフェ
※以下の情報は、「山西省・明らかにする会」などの協力を得て、中国の日本軍性暴力被害者の名誉回復運動について研究、調査を行っている一般社団法人ふぇみ・ゼミ&カフェ運営委員の熱田敬子(ジェンダー、社会学研究者、山西省・明らかにする会会員)に中国・山西省の張双兵氏より情報が入り、熱田が関係者に取材したものです。重要なニュースであるため、ニュースリリースとして日本語で広くお知らせいたします。
本文:
2024年4月15日、17日に、中国・山西省の日本軍性暴力被害者遺族が、山西省高級人民法院に日本政府を訴える民事訴訟の訴状を集団で提出したことをお知らせします。1990年代から2000年代にかけて、中国山西省の日本軍性暴力被害者たちは、日本政府に対して謝罪と賠償を求めて日本の裁判所で3件の訴訟を起こしました。これらの訴訟は、すでにすべて原告敗訴に終わり、原告被害者も亡くなっています。今回は、裁判闘争中に母親を支えてきた遺族らが、遺志を継いで中国の裁判所での裁判を試みたものです。
山西省の農村で長年日本軍性暴力の被害者の調査をしてきた元教員・張双兵(ヂャン・シュアンビン)氏からの情報によれば、中心となっているのは、かつて日本で賠償請求訴訟を起こした原告(現在すべて故人)の遺族16名です。そこに、当時裁判に参加しなかった2名の遺族が加わり、計18名の被害者遺族が今回の提訴に参加しています。
訴訟にあたり中国政府の支援などはなく、今も都市との経済格差の激しい中国の農村で暮らす遺族が、自らの意志で母親の名誉を取り戻そうとした自発的な動きです。張双兵氏が訴訟のサポートをし、中国における公益訴訟で著名な上海の賈方義(ジャー・ファンイー)弁護士、郭乗希(グォ・チャンシー)弁護士らが代理人を務めています。今回提訴に加わった被害者遺族たちは以前にも、中国で大ヒットした日本軍性暴力についてのドキュメンタリー映画『二十二』(2017年、中国)と監督に対し、映画が母親たちの裁判闘争を不可視化したことなどへ抗議行動を行っています。
被害女性万愛花(ワン・アイファ)氏の娘・李拉弟(リ・ラーディ)氏は、「この訴訟が、(すでに亡くなった被害者の)老人たちを満足させることだと信じています」と話しています。
中国新聞網もすでに2024年4月18日づけのニュースで伝えたように、この訴訟は2016年に韓国の日本軍性奴隷制の被害者たちが韓国の裁判所に日本政府を訴えた訴訟に触発されたものです(2023年11月23日にソウル高裁で日本政府に2億ウォンの賠償を命じる判決が出された)。
今後、山西省高級人民法院が訴状を受理するかどうかが注目されます。日本軍性暴力の被害者の名誉回復を求める新たな動きとして、是非、取材し、報じていただきますようお願い申しあげます。
今回の提訴に参加したのは以下の方たちのご遺族です
■中国人「慰安婦」損害賠償請求訴訟 第一次(1995年東京地裁提訴、2007年上告棄却)
李秀梅、劉面煥、陳林桃、周喜香
■中国人「慰安婦」損害賠償請求訴訟 第二次(1996年東京地裁提訴、2007年上告棄却)
郭喜翠、侯巧蓮
■山西省性暴力被害者損害賠償請求訴訟(1998年東京地裁提訴、2005年上告棄却)
尹玉林、楊時珍、楊喜荷、南二僕、高銀娥、趙潤梅、張先兎、万愛花、趙存妮、王改何
■日本における訴訟に参加していない被害者
侯冬娥(1990年代の提訴前に逝去)、張改香
ご参考資料)「中国慰安妇受害者子女首次在国内起诉日本政府」(中国新聞網)2024. 4.18
https://m.chinanews.com/wap/detail/chs/zw/10201080.shtml
2024.4.20追記:参考資料の中国新聞網のニュースで、「侯冬娥」さんが「侯冬桃」さん、「侯巧蓮」さんが「侯巧良」さんとかかれていますが、こちらは本ニュースリリースの通り、「侯冬娥」「侯巧蓮」が正しいです。現地の訴訟団・張双兵氏に確認し、追記します。
2024.4.24 追記:参考資料の中国新聞網のニュースで、韓国の裁判について、2021年に提訴となっていますが、こちらは、2016年提訴、2021年地裁判決、2023年高裁判決が正しいものです。確認し、追記します。
2024.7.7追記:現時点で山西省高等法院が訴状を受理したというニュースはありません。
本ニュースリリースに関するお問い合わせ窓口:
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担当 熱田敬子(ジェンダー、社会学研究者)
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