【感想】ポスト#MeTooの反性暴力運動 第一回「ジャニーズの性暴力問題」①春藤優さん感想
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「ポスト#MeTooの反性暴力運動」講座の第一回として、8月16日に対談「ジャニーズの性暴力問題」を開催しました。春藤優さんからの感想レポートです。
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「ポスト#MeTooの反性暴力運動」第一回「ジャニーズの性暴力問題」は、ジャニーズ性加害問題当事者の会代表の平本淳也さんと当事者の会メンバーである中村一也さんが、鈴木みのりさんを交えながらトークを行った。
私は、この講座の告知兼会場参加者募集メールにあった「ぜひ会場でWith youの声を届けてください」の文字を見て、これは絶対に行かなくてはならないと会場参加を申し込み、会場でゲストの方のお話を伺った参加者である。「絶対に行かなくては」と思ったのは、私自身が長年ジャニーズのファンであり、ジャニーズの某グループを応援するためのSNSアカウントを持っていたことから、いかに平本さんらが、「ファン」を含む人たちから誹謗中傷を受けているか、「嘘つき」呼ばわりされているかを目の当たりにしていたからだ。私は、顔の見えないインターネット上ではなく、対面で、私の声で、私の名前で、支援とwith youの声を伝えたいと思い、参加した。
「噂程度にしかならなかった」
平本さんは、35年間声をあげ続けてきた。「これだけずっと声をあげてきたのに噂程度にしかならなかった。」と言った。自分があげた声が受け止められず、噂であり続けることに、平本さんは「自分って無力だな」と感じたという。それでも、辞めずに一人でも続けてきた。平本さんは、冗談のようにしばしば「止めてくれないとずっとしゃべっちゃいますよ?」と司会で運営委員の熱田さんの顔を見ながら、話していた。実際に、平本さんは堰を切ったようにたくさん話しておられた。その様子を見て、私は、どれだけの長い間、この声は聞かれてこなかったのだろうと思った。
今回、飛び込みで参加することになった中村さんも、ゆっくりと言葉を紡いでいた。印象的だったのは、今回の一連の日本社会の受け止めについて「外圧がないと変われないってなんなんだ」と怒りを込めて話していたことである。平本さんも、ジャニー喜多川氏本人への怒りに加えて、被害者が細かに証拠を提示しなければならず、嘘つき扱いをする社会の構造そのものへの怒りを滲ませていた。
平本さんは、人権問題であることを強調し、繰り返した。不当な権力関係の中で、性暴力は行われる。ジャニー喜多川の性暴力は、「噂」や「スキャンダル」となり、多くの人が見て見ぬ振りをしてきた。35年間声を挙げ続けても聞かれない構造があった。「男だから」「ジャニーズだから」声をあげられるのではなく、その逆で、「男だから」「ジャニーズだから」とずっと無いことにされてきた。私自身もまた、「噂でしょ…?」と思ってきたファンの一人だ。そうやって声が「聴かれない」構造が作り上げられてきた。
「居心地の悪いところ」だとしても
ジャニーズ事務所をめぐるこの問題は、長年ジャニーズファンであった私にとって、正直に言えば、大変「居心地の悪い」ものである。
この「居心地の悪さ」は、いろんな要因がある。平本さんの「噂程度にしかならなかった」を体現するように、「まぁ、噂でしょ。本当だったら大問題だし。」と見ないフリをしてきた。それに、平本さん、中村さんの前ですら意識して話さないと「ジャニーさん」と「愛称」で呼んでしまうほど、きちんと会ったこともなく、単に好きなアイドルの所属事務所の元社長に過ぎない存在に、なぜか愛着がある。他にも、幾重もの要因(だってジャニーズはただのエンターテインメントじゃない! 私の生きがいで人生だったのだから!)により、私はこの問題に対し「だって…」とか「でも…」と言いたくなるのを、懸命に喉元で止めている。その先に続く言葉が、これまで「女性」の被害者に向けられてきた二次加害と同じものだと気が付いて、そんな自分に吐き気がする。
しかし、この「居心地の悪さ」は私がジャニーズファンだからなのか? むしろ、なぜ「#MeToo」ムーブメントに対して、「そうだ! そうだ!」と特に居心地の悪さを感じずにいられたのか。確かに、「MeToo」と声をあげた一人ひとりの告発の声と内容は全く違うもので、想像を超えるものもたくさんあった。けれどどこかで「私も」と、いろんな差異を塗りつぶして受け止めている自分がいたのではないか。
「居心地の悪い」ところだとしても、そこにとどまって声を聞くこと。そこから始まる。想像もできない被害に、MeTooとは言えない。そして、長年声を無視してきたファンの一人であった私がWith youと言っていいのか、ためらいもある。「ともに」あれるのか、わからない。それでも、今からでも、この声を聞き、受け止めたい。受け止めることは、「居心地の悪さ」を勝手に「申し訳なさ」に変換して、追究すべき責任から目を逸らすことではない。一体、いかなる構造が、事実が、性暴力を生み出しているのか、考え行動するために受け止める。それは、平本さん、中村さんの声を聞くことから始まるはずだ。是非、あとから配信からでも申し込んで、平本さん、中村さんの声を聞いて欲しい。
そして、この「ジャニーズの性加害問題」は、「ポスト#MeTooの反性暴力運動」講座の第一回である。ジャニーズのファンであった私には、第一回はこんな風に感じられた。しかし、ファンではない人もたくさんいるだろう。そうした人にも、「ポスト#MeToo」のキーワードを念頭に置きながら、この回を見てほしい。「居心地の悪さ」「同じでなさ」があって、それを持ちながら、声を聞くこと、受け止めること、With youということはどういうことなのか。安易に「私も悪かった」と追究すべき責任から目を逸らさないためにはどうすればよいか。性暴力を許さない社会を作るとは、どういうことなのか。この第一回から、始まるように私は思う。
春藤 優
(「ポスト#MeTooの反性暴力運動」参加者)
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