【感想】吉野靫さん講座#2024年U30第8回

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 2024年度ふぇみ・ゼミU30の最終回、第8回では吉野靫さんにご登壇いただき、「日本のトランスジェンダーと規範/制度/医療」というテーマでお話しいただきました。講座の前半では、まず日本のトランスジェンダーが置かれている状況の歴史的経緯を、規範、制度、医療などの観点からご説明いただきました。そして後半では、トランスジェンダーに対するヘイト言説の構造や、それを退けるうえで考えるべきことについてお話しいただきました。

 今回特に重要だと感じたのが、講座の終盤でお話しいただいた「『わたし』や『あなた』は社会の中でどういう位置にいるのか」という話題でした。吉野さんは、ここ数年トランスに関する本がたくさん出版されるようになったことについて、入門書やQ&Aのような本にだけ頼ることの弊害を指摘されていました。こうした本は、「とりあえず今知りたい」人のための「応急処置」のような役割を果たす一方、「トランスジェンダーという層」に対するハンドブックとして捉えられがちであり、記述されるのはあくまで「正史」で、メジャーな人物が紹介されやすく、(依頼する側の問題で)書き手にも偏りがあることをお話しされていました。また、用語の紹介や解説も概論にならざるを得ないので、背景や文脈の違いが踏まえられず、硬直化した理解にとどまることや、言葉が権力であることには自覚的でなければならないことについてもお話しいただきました。

 私はインターセクショナル・フェミニズムを学ぶなかで、「自分の立場性に自覚的であること」の重要性を感じていたため、このお話は大変印象的でした。トランスジェンダーが「層」として捉えられてしまうと、当事者一人一人の姿が見えにくくなることや、メジャーな人物による語りが共有されやすく、「マイノリティの中のマイノリティ」は取りこぼされがちであることは、社会や制度の問題を考えるうえで念頭に置かれるべきことだと思いました。

 そして、トランスに「なる」ことにも条件があり、育った環境や経済状況などの要素が重なり合っていることや、時に当事者が排外的・暴力的な状態に見える場合でも、それを今「良い」とされている価値観でジャッジしてよいのかというお話も大変重要でした。社会的な規範が当事者をそのような状況に押し込めている場合もあるとのことで、ヘイトの問題を考えるうえでも、常に社会構造に目を向け続けることの必要性を感じました。

 全体を通して、当事者一人一人が経験し実践してきたことの重みや、単純化できない現実に向き合うことの大切さを学んだ回でした。吉野さん、この度は大変貴重なお話をありがとうございました!

ふぇみ・ゼミスタッフ 山道 未来

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