*ふぇみ・ゼミU30受講生とは2022年度生のみです

 本講座では、ジェンダーと民主主義の視点から、メディアの役割、あり方、オルタナティブメディアの可能性と市民とメディアの関わりを問い直す。
 現在の日本社会において、政府や権力の暴力に歯止めをかけ、議論の場を提供するメディアの役割は、危機に瀕している。
 政治のメディア介入と、メディアの政権への忖度は、2000年代から急速に進み、原発事故をきっかけにより報道の自由を大幅に縮小させた。人権侵害や社会問題の告発はメディアの重要な役割だが、マスメディアの常態化したセクハラや、格差社会への無理解など、報道組織と報道人の人権感覚の欠如は、若い世代を中心に、大手マスメディアへの不信感を抱かせている。
 その反面、オルタナティブな存在として注目されたSNSには、緩い規制を利用した差別やヘイトスピーチが野放しになり、新たな問題を生み出している。
 こうした危機を乗り越え、未来の社会とメディアの関係を考えるためには、ジェンダーと民主主義の視点での問い直しが不可欠である。それぞれの現場でメディアへの問題提起をしてきた講師を迎え、連続学習会、参加者との交流を通じて新たなメディアの姿を構想する。

《申し込み時の注意点》
*ふぇみ・ゼミ受講生の通し券販売がないのは、ふぇみ・ゼミU30参加者年間パスポートが通し券になるためです。
通しで購入されたいふぇみ・ゼミ受講生の方は、ふぇみ・ゼミU30参加者年間パスポートをご購入ください。詳しくはふぇみ・ゼミのホームページでお知らせいたします。
※各回の申し込みは、18時までとさせていただきます。18時までに購入をしていただいた方にZoomアドレス・IDをお送りいたします。大変申し訳ありませんが、それ以降の申し込みの方は後日動画配信にて視聴いただく形になり、Zoomアドレス・IDを送信できかねます。ご了承ください。
※こちらの講座には期間限定の「後から配信」がございます。お申し込みいただいた講座の映像を、メールにてお送りさせていただきます。

*ふぇみ・ゼミのすべてのイベント(オンライン・オフラインともに)において、様々な状況等で、イベント開始予定時間にきっちり開始されるとは限りません。時間の遅延に関してクレームやご意見をいただきましてもその要望に応じられるとは限りません。たとえ遅延したとしてもなんらかの形でイベントに参加できる努力をいたしますので、何卒ご理解ください。

※Zoomのサポートはいたしません。ご自身で各サイトなどをご覧ください。
※参加者の方で画面のキャプチャー、録画・録音はしないでください。
※電子配布資料については、お手元にとどめ、個人の参考としていただき、再配布、再利用、転送、転載はなさらないでください。

申し込み

https://media-femizemi.peatix.com/

年間プログラム

【第一回】3月25日(金)19:00~21:00
「本当に重要なことを伝えられないのはなぜか?〜マスメディアを阻んでいるもの〜」
講師:竹信三恵子さん
1976年、朝日新聞社に入社。同社編集委員兼論説委員、和光大学教授などを経て2019年4月から現職。2009年、非正規労働と貧困をめぐる一連の取材活動に対し貧困ジャーナリズム大賞。著書に『ルポ雇用劣化不況』(岩波新書)、『家事労働ハラスメント』(岩波新書)、最新刊に『賃金破壊~労働運動を<犯罪>にする国』(旬報社)
〈内容〉
マスメディアは、至るところに出現し、さまざまな事実を解釈し、知らぬ間に私たちの生活を左右します。それは「環境」であり「第二の現実」です。しかしマスメディアは、私たちを真に規定する事柄は、しばしばスルーしていくかに見えます。代表例が、ジェンダー、労働、貧困、差別でしょう。基地や原発もそのひとつかもしれません。それはなぜか、重要なことを伝えられるメディアの実現には何が必要なのかを、一緒に考えましょう。

【第二回】4月22日(金)19:00~21:00
「メディア界の#MeToo運動と報道の自由」
講師:松元ちえさん
英字紙記者、海外通信社を経て、メディア協同組合Unfilteredを設立。共著に『マスコミ・セクハラ白書』(文藝春秋 2020年)、共同翻訳に『世界を動かす変革の力〜ブラック・ライブズ・マター共同代表からのメッセージ』(明石書店 2021年)など。
〈内容〉
ハリウッドの女性たちが、映画界の性暴力やセクシュアル・ハラスメントを告発した勇気ある行動は、#MeToo運動として世界に飛び火した。日本では、2018年4月、財務事務次官(元)から取材中にセクハラを受けたとしてテレビ局の女性記者が被害を訴えたことを機に、全国のメディアで働く女性たちが連帯。業界に蔓延する性暴力について、声をあげた。報道現場において情報と引き換えに性的行為を要求することは、記者に対する人権侵害であるとともに、報道の自由に対する冒涜でもある。こうした問題が水面下で拡大してきたのは、業界における管理職の女性比率が極端に少ないことも原因であるとして、メディアの労働組合の女性たちが業界内のジェンダー平等を実現するために立ち上がっている。

【第三回】5月20日(金)19:00~21:00
「NHK番組改変事件から20年~女性国際戦犯法廷が問い続けること」
講師:池田恵理子さん
1950年生まれ。早稲田大学政経学部卒。1973年からNHKのディレクターとして「おはようジャーナル」「ETV特集」等で女性、教育、人権、エイズ、戦争、「慰安婦」などの番組を制作。90年代後半から女性映像集団・ビデオ塾を創設、中国の性暴力被害者支援、女性国際戦犯法廷の開催に携わり、wamを開館。2010年には館長、現在は名誉館長。
〈内容〉
「慰安婦」被害者の告発から30年経つが、「慰安婦」問題は未解決である。法的責任を認めず、「慰安婦」の存在すら否定したい日本政府に対し、その責任を問い、記録と記憶を残そうとする女性たちの闘いが続いているからだ。女性国際戦犯法廷はこの問題の本質を暴いたが、これを取り上げたNHKの番組は政治介入によって無残に改竄された。この事件の展開から、戦時性暴力と戦争責任に向き合えない政府とメディアの現在を明らかにする。

【第四回】6月17日(金)19:00~21:00
「ヘイトがあふれる時代に出版業界が果たしてしまった“役割”」
講師:木瀬貴吉さん
ころから代表。1967年滋賀県生まれ。早稲田大学第二文学部中退。1991年からNGO「ピースボート」スタッフに。その後、地域紙の編集などを経て、2013年に出版社「ころから」を創業。『九月、東京の路上で』『さらば、ヘイト本!』『草 日本軍「慰安婦」のリビング・ヒストリー』など60点を刊行している。JリーグFC東京のサポーター歴は23年。
〈内容〉
2016年にヘイトスピーチ解消法が制定され、また米国からはブラック・ライブズ・マター運動が波及するなど、「反差別」を社会規範とする兆しが現れている。が、ネットを中心に女性や特定の民族を攻撃する言説はいまも溢れている。こうした状況に対して、出版業界はどのような”役割”を果たしてしまったのか/しているのか? 「本は薬にも毒にもなる」と語る講師とともに、本とヘイトの関係を見つめ、そして誰も排除しない業界のために何ができるか話し合います。

【第五回】7月29日(金)19:00~21:00
「市民が行う情報公開」
講師:三木由希子さん
NPO法人情報公開クリアリングハウス理事長。専修大学兼任講師。情報公開制度や公文書管理制度、個人情報保護制度など公的機関に対する知る権利の確立のため調査、政策提案、意見表明、制度利用者支援などを行う。自治体の審議会等の委員も務める。
〈内容〉
民主主義を機能させるには情報を知らされている市民の存在が欠かせない。受動的に流れてくる情報に触れるだけでなく、情報公開制度で自ら知りたい情報の公開を求める能動性も必要だ。主体的で自律的な市民の存在が多くいることが機能するための条件である情報公開制度について、市民にとってどのような手段であるのか、どのように実践されてきているのかを概観する。

【第六回】8月12日(金)19:00~21:00
「海外での「歴史戦」と右派のメディア展開」
講師:山口智美さん
モンタナ州立大学教員。専門は文化人類学、フェミニズム。共著に『社会運動の戸惑い フェミニズムの「失われた時代」と草の根保守運動』(斉藤正美、荻上チキとの共著/勁草書房)、『海を渡る「慰安婦」問題 ――右派の「歴史戦」を問う』(能川元一他との共著/岩波書店)など
〈内容〉
90年代半ば頃から歴史修正主義や嫌韓、アンチフェミニズムなどのメッセージが日本のマスメディアやネット空間で蔓延し、悪化してきました。2012年ごろからは、右派が日本軍「慰安婦」問題をめぐる「歴史戦」を海外で展開する中で、盛んに右派がマスメディアやネットメディアを使い、歴史修正主義やレイシズム、セクシズムに基づくメッセージを発信しています。さらに、日本のみならず、海外の政治家や学者、運動家らへのネットメディアを使った、右派の攻撃や嫌がらせも起きています。こうした状況について考えながら、右派の運動にどのようにメディアが使われ、日本、および米国など海外で展開される日本の右派運動に活かされているのかを検討します。

【第七回】9月9日(金)19:00~21:00
「ネットに派生し増幅する差別~部落問題を中心に~」
アドバイザー:松村元樹さん
公益財団法人反差別・人権研究所みえ 常務理事兼事務局長
〈内容〉
2004年度から三重県でスタートしたインターネット上の差別投稿のモニタリング。進展するサービスに応じるかのように変化・深刻化する差別問題に微力ながら取組を進めてきています。実社会から派生し、電子空間上で増幅され、再び実社会に降り立ち、マイノリティに深刻な被害を与え続ける差別が、コロナ禍でさらに過激化している現状や課題、問題解決に向けた政策等についてお話いたします。

【第八回】10月21日(金)19:00~21:00
「まんがで描こう、一目で伝える社会問題。コツコツ発信で社会を変える」
講師:ぼうごなつこさん

1974年生まれ。高校卒業後、様々なアルバイト、パートをする傍ら、まんがのイラストの応募に公募したり出版社に持ち込み(直接持ち込む度胸がないかったので郵便で送りつける)をするうちに、少しずつ仕事が来るようになる。当初は生活系、教育系の挿絵やまんがを描いていたが、政治風刺漫画をSNSに上げていくうちに、ここが主なジャンルとなる。
〈内容〉
社会とは人々の集まり。社会を変えるということは、同じ社会に住む多くの人を説得すること。だからメディアが非常に重要となり、独裁志向の政権はメディアを掌握しようとします。そんな中で、「マス」メディアではない個人はどう発信していくか。
テキスト、動画、街に出てのデモやスタンディング。様々な方法がありますが、私は日本社会でとても親しまれている「まんが」というメディアを大いにお勧めしたいです。動画の再生できない環境でも、長いテキストを読む余裕のないときでも、まんがは一目でサクッと伝えることができます。あなたの伝えたい問題を、まんがでどのようにフォーカスし、切り取り、わかりやすく料理するか。そして、描き上げた作品が多くの人の目に留まるよう、どのような方法でアピールし拡散していくのか。おっかなびっくりSNSに上げ始めた政治風刺漫画が、多くの人の共感を呼び出版するまでに至った自分自身の経験に基づき、その中でつかんだノウハウをお話し致します。さらに、まんがの「わかりやすさ」「人目を惹くインパクトというメリットは、同時に誰かを傷つけてしまう表現にもなりうる諸刃の剣ともなりえます。この辺りの気をつけ方も、私の苦い経験を踏まえてお話ししようと思います。

【第九回】11月18日(金)19:00~21:00
「川崎のヘイトスピーチを取材してー市民の声が罰則条例に至る過程を中心に」
講師:石橋学さん
神奈川新聞・記者

*スピンオフ回* 12月17日 (土) 10:30~12:30
「ネットワークによる裁判〜人権強化のためのオンラインオープンリソースの活用」
講師:Alexa Koenigさん
Executive Director of the Human Rights Center, UC Berkeley School of Law
(カリフォルニア大学バークレー校ヒューマンライツセンター事務局長)

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