迷走するセクシュアリティー運動と政治の間で


申し込み

  • お申し込みの締め切りは【2025年4月30日23:55】です。
  • お申込み時点ですでに終了している回につきましては、後から配信でご覧ください。
  • zoomでのリアルタイム参加を希望される方は開始時間の1時間前までにはお申込みください。それ以降の直前のお申込みには対応できないことがあります(その場合、後から配信でご覧ください)。

以下のPeatixサイトからお申し込みください。

https://sexuality.peatix.com

ふぇみ・ゼミU30参加者年間パスポート(一般20代以下¥37,000,学生¥22,000)寄付者パスポート(5万円以上寄付)をお持ちの方は無料でご参加いただけます。寄付者の方にはパスポート以外にも様々な特典がございます。これを機にご寄付/パスポートのご利用をご検討ください。

※すべての回に、UDトーク(校正者あり)による日本語リアルタイム字幕が付きます。
※すべての回でリアルタイム・後日の録画配信を行います
※全てのお問い合わせには、スタッフの勤務体制の関係上、返信まで数日いただくことがございます。femizemi2017@gmail.comまでご連絡ください。

◾️講義概要

セクシュアリティをめぐる運動は本来、自民族中心的なナショナリズムを批判し、異性愛が当たり前とされる価値観や、男女二元論に基づく性の見方、結婚や家族のあり方、さらには資本主義そのものを見直すなど、社会の根本的な革命を目指すものでした。しかし、現在では、結婚の権利や緊急避妊薬(アフターピル)へのアクセス権といった個別の「権利の獲得」にテーマが限定され、運動の保守化・右傾化が進行しています。また、LGBTQ+向けのサービスやフェムテックなどにのみ注目が集まる一方、運動が商業的に利用されることで、本来の社会革命の力が損なわれています。
 こうした現状を危惧する立場から、本講座では1980年代のエイズ/クィア・アクティヴィズムや1990年代の府中青年の家裁判といったこれまでの運動を振り返ります。これらは、単なる権利拡大にとどまらず、社会的排除や差別の根本的な革命を目指した運動であり、セクシュアリティをめぐる今日の課題に重要な示唆を提供してくれます。また、「地域づくり」と連携するパレードの取り組みや多様性を踏まえた性教育の実践など、経済的な成功だけではないアプローチ、エスニックマイノリティが抱える多層的な差別、セックスワークが排除されがちな問題を取りあげ、セクシュアリティの運動が社会を変える可能性を探ります。

◾️各回テーマ/内容

第1回 2024年12月16日(月)19:00〜21:00
新ヶ江章友さん「エイズがクィア・スタディーズに与えた影響」

第2回 2025年1月24日(金)19:00〜21:00
村上薫さん「セックスワークイズワーク~『大坂ミナミの貧困女子』問題と風俗業への差別」

第3回 2025年1月31日(金)19:00〜21:00 
堀川修平さん「私が「男子の性」教育にノれなかったワケ」

第4回 2025年2月14日(金)19:00〜21:00
朴利明さん「「在日」のクィアであること―重なり合うアイデンティティを抱きかかえそこねた経験から改めて〈解放〉を見つめ直す」

第5回 2025年2月22日(土)19:00〜21:00
李史織さん「交差する日常ーコリアンやトランスジェンダーやひとり親の親子の話」

第6回 2025年3月14日(金)19:00〜21:00
欧陽珊珊さん「レインボーパレードを巡って~地域から生まれるアクティビズムの想像力」

第7回 2025年3月28日(金)19:00〜21:00
風間孝さん「府中青年の家裁判が明らかにした社会の姿とは?」(仮)

第8回 2025年4月4日(金)19:00〜21:00
于寧さん「「北京クィア映画祭」が中国のクィア・アクティビズムに及ぼした意味」

第9回 2025年4月18日(金)19:00〜21:00
飯野由里子さん「なぜ私はセクシュアリティ研究をやめたのか」

■開催方法/各回詳細/講師プロフィール

第1回:オンライン開催
第2~9回:オンラインと会場開催を併用するハイブリッド開催
・会場:一般社団法人ふぇみ・ゼミ&カフェ事務所(東京・赤羽)
zoomURLは、講座当日のイベント開始1時間前を目安にお送りいたします
 会場参加を希望された方にも全員、zoomのURLと後日の録画配信はお送りいたします。※講座終了後も録画をお申込みいただけます。

一回券
 ・一般 1,980円(税込)
 ・2024/2025年度寄付者〈10,000円以上〉・学生 1,650円(税込)
 ・2024/2025年度ふぇみ・ゼミU30受講生 1,100円(税込)
 *全9回の内、複数回(9回未満)を購入される場合、お手数おかけしますが一回券をそれぞれの回で1枚ずつお申込みください
全回通し券(全9回)
 ・一般 16,500円(税込)
 ・2024/2025年度寄付者〈10,000円以上〉・学生13,500円(税込)

ふぇみ・ゼミU30参加者年間パスポート(一般20代以下¥37,000,学生¥22,000)寄付者パスポート(5万円以上寄付)をお持ちの方は無料でご参加いただけます。寄付者の方にはパスポート以外にも様々な特典がございます。これを機にご寄付/パスポートのご利用をご検討ください

■各回詳細/講師プロフィール

第1回(12/16)「エイズがクィア・スタディーズに与えた影響」講師:新ヶ江章友(しんがえ・あきとも)さん

本講座では、1980年代半ばにアメリカ合衆国で発生したエイズ・アクティビズムを、特にACT UPの活動を中心に概観した後、この一連の運動が、クィア・スタディーズにどのような影響を与えたのかに着目します。
特に、クィア理論がどのように生成されていったのかを、エイズとの関係から考えたいと思います。
クィア理論においては、ジュディス・バトラーやイヴ・コゾフスキー・セジウィック、レオ・ベルサーニやリー・エーデルマンなどの他にも、クィア理論に影響を受けた文化人類学者や社会学者の研究についても概観します。

◆新ヶ江章友さんプロフィール◆

大阪公立大学大学院都市経営研究科/人権問題研究センター・教授。専門は、文化人類学(医療人類学、クィア人類学)。筑波大学大学院人文社会科学研究科修了。博士(学術)。主著に『日本の「ゲイ」とエイズ:コミュニティ・国家・アイデンティティ』(青弓社、2013年)、『クィア・アクティビズム:はじめて学ぶ<クィア・スタディーズ>のために』(花伝社、2022年)。共著に『多様性との対話』(青弓社、2021年)、『東南アジアと「LGBT」の政治:性的少数者をめぐって何が争われているのか』(明石書店、2021年)など。


第2回(1/24)「セックスワークイズワーク~「大坂ミナミの貧困女子」問題と風俗業への差別」講師:村上薫(むらかみ・かおる)さん

フェミニズムを掲げる人たちのなかでも意見が割れる「セックスワーク問題」。
本講演では、セックスワーカーの権利を求める運動の重要性と労働として認識されるべき理由についてお話します。
社会における偏見や差別の実態を明らかにし、職業として認めない立場の人々に対し、その根拠や影響を問いかけます。また、「大坂ミナミの貧困女子」の事例を通じて社会的偏見を考察します。
当事者たちが直面する現状についても報告し、風俗業への理解を深め、労働者としての権利を尊重する社会の実現を目指します。
セックスワークに批判的なかたも遠慮なくご参加ください。

◆村上薫さんプロフィール◆

1993年生まれ。現役風俗嬢。大阪在住。狭山事件の再審を求めている。筆頭著者として自身の名を使われたヘイト本「大阪ミナミの貧困女子」を絶版にするため宝島社を訴える。その闘いが岩波新書「女性不況サバイバル」に掲載された。風俗で働く人たちの権利向上のためセックスワークイズワークの立場から講演を行う。茨木市の労働組合、サポートユニオンwithYOU執行委員。

第3回(1/31) 「私が「男子の性」教育にノれなかったワケ」講師:堀川修平(ほりかわ・しゅうへい)さん

「男子の性」教育は、日本の性教育でも早くから着目されてきた研究・実践蓄積のあるテーマです。私自身、子ども時代にそのような授業を「男子」として受けてきました。大学で教育学を学ぶ中で、あるいは、性教育に関する民間教育研究団体に所属してからも、多くの「男子の性」教育に関する論文や実践を学びました。でも「男子」の話なのに自分のこととして「ノれない」。それはなぜだったのか? キーワードとなる「多様性」を主軸にこの経験を考察してみましょう。

◆堀川修平さんプロフィール◆

日本学術振興会特別研究員(PD)。専門は、性の多様性教育実践(者)・性的マイノリティ運動実践(者)の歴史。主な著書として『「日本に性教育はなかった」と言う前に―ブームとバッシングのあいだで考える』(柏書房、2023)、『気づく立ちあがる育てる―日本の性教育史におけるクィアペダゴジー』(エイデル研究所、2022)。

第4回 (2/14)「「在日」のクィアであること―重なり合うアイデンティティを抱きかかえそこねた経験から改めて〈解放〉を見つめ直す」講師:朴利明(パク・リミョン)さん

民族差別と闘う運動への参加と民族コミュニティとのつながりが切り拓いたはずの〈解放〉の可能性は、自らのクィア性との関係においてなぜ挫かれてしまったのか…
そして、民族的な解放を志向しながら自己のクィア性を抑圧するという矛盾は、いかにして有害な男性性との取引によってその解消が図られようとしてしまったのか…自身の経験を振り返りながら考察し、重なり合うアイデンティティを丸ごと抱きかかえ全人的な解放をめざす「連帯」の可能性について参加者とともに考えたい。

◆朴利明さんプロフィール◆

在日朝鮮人3世。10代の終わりまで日本名(通名)で生活してきたが、大学在学中に民族運動と出会ったことをきっかけに民族名を名乗り始める。また、自身のクィア性を自覚しながら民族解放運動にコミットしてきた経験から差別の交差性に関心を寄せる。
(一財)アジア・太平洋人権情報センター(ヒューライツ大阪)研究員。

第5回 (2/22)「交差する日常ーコリアンやトランスジェンダーやひとり親の親子の話」
講師:李史織(り・しおり)さん

高校一年生の娘は男の子の体で生まれました。朝鮮学校に通い、外国人として、セクシャルマイノリティとして日本社会で生きづらさをダブルで抱えるであろうと覚悟を決めて挑んだ子育てでした。
今日まで成長するのに親子で大変な努力を重ね、心の傷を乗り越える毎日がありました。
しかし、今も様々な不安を抱えながらも彼女は堂々と生きています。
私たちの日々の話が生きるヒントや勇気に繋がればと思います。

◆李史織さんプロフィール◆

在日朝鮮人三世。シングルマザーの会社員。高校一年生のこどもがひとりいます。

第6回(3/14)「レインボーパレードを巡って:地域から生まれるアクティビズムの想像力」講師:欧陽珊珊(おうやん・しゃんしゃん)さん

全国のレインボーパレードの調査をもとに、グローバル化された主流の「LGBTQプライド」イベントとは異なる、日本の地方におけるローカルな活動の実践を検討します。大都市と地方で開催されるイベントの違いや、バリアフリーへの取り組み、他のマイノリティとの連携に関する事例を取り上げ、性的マイノリティの運動が地域社会の共生構築にどのように寄与しているかを考察し、パレードにとどまらずアクティビズムの多様な可能性を探求します。

◆欧陽珊珊さんプロフィール◆

中国出身。立命館大学大学院先端総合学術研究科一貫制博士課程在籍。クィア・スタディーズ、ディスアビリティ研究を専門とし、障害とセクシュアル・マイノリティの交差的経験について研究を進めている。主研究業績に、「残酷児:台湾における障害のある性的少数者の実践」『クィア・スタディーズをひらく3』晃洋書房、108-135、2023;「カミングアウトをめぐる可変的な交渉過程:ある障害をもつ男性同性愛者の経験を事例に」『Gender and Sexuality』19:47-68、2024。

第7回 (3/28) 「府中青年の家裁判が明らかにした社会の姿とは?」(仮)講師:風間孝(かざま・たかし)さん 

(概要近日更新)

第8回(4/4) 「「北京クィア映画祭」が中国のクィア・アクティビズムに及ぼした意味」講師:于寧(う・ねい)さん

2024年11月、「北京クィア映画祭」が17回目の開催を成功裏に終えた。近年、中国当局によるクィア運動に対する取り締まりと、SNSを中心に性的マイノリティに対するバックラッシュがさらに強まっている中国では、これは非常に異例なこととも言える。「北京クィア映画祭」の20年超の歴史を振り返ることを通じ、厳しい政治状況と社会環境に柔軟に対応してきた映画祭の存続戦略を分析した上で、映画祭の主催、そして映画制作が中国のクィア・アクティビズムに及ぼす意味について考える。

◆于寧さんプロフィール◆

東京大学大学院総合文化研究科博士後期課程満期退学。現在、国際基督教大学ジェンダー研究センター研究員、東京大学大学院総合文化研究科・教養学部附属 教養教育高度化機構D&I部門特任研究員。専門分野は中国映画史、クィア・スタディーズ。近代以降の中国本土の「同性間の親密な関係」をめぐる諸事象について歴史的研究を行っている。

第9回(4/18)「なぜ私はセクシュアリティ研究をやめたのか」講師:飯野由里子(いいの・ゆりこ)さん

2010年代以降、性的マイノリティの運動や研究は、国家や企業の論理に取り込まれ、既存制度の表面的な「改良」によって満足させられることで、根本的な社会変革に向けた力を失いつつある。企業協賛イベントやLGBTQ+向け「ニッチ市場」の形成、同性婚法制化に向けた動きに対する「慣れ」や警戒感の薄れも、その反映といえる。こうした現状に、当事者として強い危機感を抱き、セクシュアリティをめぐる運動や研究が本来持っていたラディカルさを取り戻すために必要な視点を考えたい。

◆飯野由里子さんプロフィール◆

ふぇみ・ゼミ&カフェ運営委員、東京大学大学院教育学研究科附属バリアフリー教育開発研究センター教員。一般社団法人ふぇみ・ゼミ&カフェ運営委員。専門はフェミニズム・ディスアビリティ研究。主な著書に『合理的配慮:対話を開く対話が拓く』(共著、有斐閣、2016年)、『「社会」を扱う新たなモード:「障害の社会モデル」の使い方』(共著、生活書院、2022年)など。

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