※ふぇみ・ゼミU30&寄付者パスポート対象講座
<あとから配信有り・最終日はハイブリッド開催。参加・視聴URLはメールでお送りします>
「女性の権利」という時に、「日本人女性」「シス女性」「ヘテロ女性」「健常者女性」「経済的に安定している/職業を持っている女性」「結婚している/するつもりのある女性」……だけが「女性」なのか、と思ったことはないでしょうか。実はジェンダー差別とセクシュアリティ差別、民族差別、障害差別、階級差別など様々な差別は互いに密接に結びついて、この社会を形作っています。
にもかかわらず、女性への差別と言った時に、例えば子どもを「産め」と強要されることこそ問題だとし、「産むな」と言われる障害者や移民、セクシュアル・マイノリティの視点が無視されたり、「添え物」のように扱われているというようなことはないでしょうか。
産めと言われることと、産むなと言われることは、同じ社会構造の裏表なのに……。同じことは、フェミニズムだけでなく、多くの社会運動や差別研究の現場で起きています。
インターセクショナリティとは、こうした複数の差別の軸と、それが交差して作りあげる社会構造を問うために、マイノリティ女性のフェミニストたちが運動の中からつくりあげた概念です。反差別を掲げる運動が、何を見落としがちで、それがどのように反差別に取り組む人たちの視野をも狭め、運動から力を奪っているかを問題にしてきました。
近年日本でも、インターセクショナリティへの注目が高まってきましたが、なぜ2022年現在に、まるで新しい概念が登場したように思われているのでしょう。
ふぇみ・ゼミは2017年の発足以来、このインターセクショナリティを柱としたフェミニズム運動を行なってきました。本講座では、ふぇみ・ゼミのメンバーが考えてきたことを紹介すると共に、インターセクショナリティの視点に立つ時、日本の運動と研究の一体何が問われているのかを、さまざまな立場から参加者と共に考えます。
《申込時の注意点》
※登壇者や他の参加者の方の安全を守るために、イニシャル、ニックネームなどでのご参加はできません。普段ご利用になっている名前でご参加ください。
※ふぇみ・ゼミ受講生の通し券販売がないのは、ふぇみ・ゼミU30参加者年間パスポートが通し券になるためです。
※ふぇみ・ゼミU30受講生とは「ふぇみ・ゼミU30」の2022年度生のみです。
通しで購入されたいふぇみ・ゼミ受講生の方は、ふぇみ・ゼミU30参加者年間パスポートをご購入ください。
※各回の申し込みは、当日17時までとさせていただきます。当日18時までにZoomアドレス・IDをお送りいたします。
大変申し訳ありませんが、当日17時以降の申し込みの方は後日動画配信にて視聴いただく形になり、Zoomアドレス・IDを送信できかねます。ご了承ください。
※こちらの講座には期間限定の「後から配信」がございます。お申し込みいただいた講座の映像を、メールにてお送りさせていただきます。
※お友達、同居の方などと一緒にご覧になる際も、お一人一枚のチケットをご購入いただくようお願いします。
※ふぇみ・ゼミのすべてのイベント(オンライン・オフラインともに)において、様々な状況等で、イベント開始予定時間にきっちり開始されるとは限りません。時間の遅延に関してクレームやご意見をいただきましてもその要望に応じられるとは限りません。たとえ遅延したとしてもなんらかの形でイベントに参加できる努力をいたしますので、何卒ご理解ください。
※オンラインと会場併用が確定した回については、開催前にお申込者に対し、会場参加のご希望を取ります。
※Zoomのサポートはいたしません。ご自身で各サイトなどをご覧ください。
※参加者の方で画面のキャプチャー、録画・録音はなさらないでください。
※電子配布資料については、お手元にとどめ、個人の参考としていただき、再配布、再利用、転送、転載はなさらないでください。
※本講座ではUDトークによるリアルタイム字幕を提供します。
申し込み
https://intersectionaltalk.peatix.com/
日程および各回講義内容
【1日目】2022/7/30(土) 18:30〜20:00 オンライン
「フェミニストによるフェミニズム批判ー複合差別≠インターセクショナリティ」(熱田敬子)
<内容>
インターセクショナリティ=差別の交差性は、「女性であることだけ」を問題にするマジョリティ・フェミニズムを、マイノリティ女性たちの運動が批判して生まれた言葉だ。これに対し、日本では1990年代以降、「複合差別」という言葉が、性別、民族、障害などの交差を問題にする言葉として使われてきた。
しかし、「複合差別」概念はマジョリティ女性のフェミニズムを批判するのではなく、むしろマジョリティ女性がフェミニズムの中心にいることを正当化する効果を持った。1970年代以降のフェミニズム第2の波の後、日本でも様々なマイノリティ女性がマジョリティ女性のフェミニズムを批判してきたが、それが差別の捉え方や運動の構造変革を要求するものとして、十分に受けとめられたとはいいがたい。
この回では、日本軍性暴力の被害女性たちによる名誉回復の訴えのインパクトを、日本の主流のフェミニズムが捉えそこねた事例を参照しつつ、複合差別とインターセクショナリティの違いを考える。
新たなフェミニズム運動を創るための批判として。
【2日目】2022/8/1(月) 19:00〜20:30 オンライン
「性の権利とインターセクショナリティ」(飯野由里子)
<内容>
性が人権や権利に関わるものとして広く意識されるようになったのは1990年代のこと。それまで公衆衛生や社会秩序のために制限・規制すべきものとして捉えられていた性は、この時期以降、人びとの生き方の幅を広げる上で重要なものとして認識されるようになった。
だが、性に関わる自己決定権やコントロール権を実際に行使できるかどうかは、その人が置かれている社会的位置に大きく依存する。このため、社会的に脆弱な位置に置かれている人ほど、自分の性や身体に関する自己決定から遠いところに置かれ、国や「専門家」や身近な他者による制限・規制を受けやすい。
この意味で、「性の権利」は、自分が選んだ場所で(選んだ人と)暮らす権利、そこで安心して暮らす権利と間違いなく連動し、交差している。この事実をふまえた時、「性の権利」の平等な配分を要求する運動が注意を払うべき論点、見落としてはならない論点とは何か?
【3日目】2022/8/3(水) 19:00〜20:30 オンライン
「民族・階級・差別とセクシュアリティ」(梁永山聡子)
<内容>
果たして「インターセクショナリティ」は新しい概念なのか?
17世紀から進行する帝国主義/植民地主義的支配の形態は、「近代化」という名で、ジェンダー、セクシュアリティ、人種、民族、階級などで差別をし、特定の社会的カテゴリーに属することができる人のみを「優遇」していく社会構造だと言える。したがって植民地/信託統治された社会・人々にとって、近代化のプロセスはインターセクショナリティを実感するプロセスでもあった。
本報告では、報告者のルーツであり/研究関心を寄せている朝鮮の植民地化のプロセスの中に埋め込まれた、インターセクショナリティについて考察する。朝鮮人女性は、階級を規定するジェンダー構造、ジェンダー構造に絡み合う階級を経験してきた。19世紀に入り欧米、日本の侵略が激化し、日本に植民地化される過程で近代的な「人種」概念から「民族」を発見することになる。その「民族」は、日本の独自の優越性と欧米から取り入れた人種概念を乱用する形で朝鮮に適用していくことになる。その人種化・民族によって差別する論理を生成し、道具とされた「近代医療」「階級論理」について、ジェンダー構造を規定する「近代産婦人科学」の普及に着目しながら考える。
歴史を知ることは「過去」を知ることに留まらず、いまだに解消されない差別を規定している論理の源泉を探ることであり、避けることができない営みである。
過去を忘却することは、今の差別を肯定することである。
【最終日】2022/8/7(日) 14:00〜16:00 ハイブリッド開催
「ディスカッション! 日本のインターセクショナル・フェミニズム」(熱田敬子、飯野由里子、梁永山聡子、河庚希(予定))
<内容>
ここまでの内容を踏まえ、ふぇみ・ゼミ運営委員が日本のインターセクショナル・フェミニズムについて議論する。日本にインターセクショナル・フェミニズムがなかったわけではなく、多くのマイノリティ女性たちの運動が同じ問題提起をしてきた。その実践の歴史から、今後のフェミニズムの姿を考える。参加者には、インターセクショナリティに関するパネリストおすすめ図書のリストをプレゼント。
話題提供者プロフィール(敬称略)
熱田敬子(あつた けいこ)
大学非常勤講師。東京下町育ち。ふぇみ・ゼミ及びゆる・ふぇみカフェ運営委員。専門は社会学、ジェンダー・フェミニズム研究。共著に『架橋するフェミニズム――歴史・性・暴力』(松香堂)、論文に「雨傘運動の性/別問題」、「『お母さん』支援としての中絶ケアの問題性」ほか。今年、梁永山聡子などとの共著で『ハッシュタグだけじゃ始まらないー東アジアのフェミニズム・ムーブメント』(大月書店)を出版。また、現代思想2022年5月号「インターセクショナリティ」特集に、「ポスト証言の時代の日本軍性暴力研究――インターセクショナルな分析のために」を寄稿した。
飯野由里子(いいの ゆりこ)
研究センター勤務。多様性をふまえた社会正義の実現をテーマに、教育コンテンツの開発・実施を行う傍ら、フェミニズム/クィア理論で抜け落ちがちな障害の問題と、ディスアビリティ(障害)理論で抜け落ちがちなジェンダー/セクシュアリティの問題に焦点を当てた分野横断的な研究を続けている。これまで『レズビアンである〈わたしたち〉のストーリー』(生活書院 2008年 単著)の他、『合理的配慮ーー対話を開く、対話が拓く』(有斐閣 2016年 共著)や『「社会」を扱う新たなモードーー「障害の社会モデル」の使い方』(生活書院 2022年 共編著)などを出版
河庚希(は きょんひ)
京都府生まれ。サンフランシスコ湾岸地域を拠点とする在日コリアン団体「エクリプス・ライジング」共同設立者、「日本多文化救済基金」共同設立者、「一般社団法人 希望のたね基金(キボタネ)」運営委員。専門はエスニック・スタディーズ。研究テーマは日米の帝国主義とその交差性、共犯性、そして環太平洋の有色人種の運動。近著 “Of Transgression: Zainichi Korean Immigrants’ Search for Home(s) and Belonging.” Japanese American Millennials: Identity, Community, and Culture. eds. Michael Omi, Jeffrey T. Yamashita, and Dana Y. Nakano. (Temple University Press, 2019)、“Cultural Politics of Transgressive Living: Socialism meets Neoliberalism in pro-North Korean Schools in Japan” Social Identities: Journal for the Study of Race, Nation and Culture. Vol. 24, 2 (2018): 189-205など。
梁聡子/永山聡子(ヤン ながやま さとこ/チョンジャ)
成城大学グローカル研究センター所属。アジア女性資料センター理事、一般社団法人希望のたね基金(キボタネ)運営委員。東京生まれの在日朝鮮人3世。専門は社会学。植民地支配・被支配経験のフェミニズム、グローバルフェミニズムと社会運動に関心がある。
論文:「『慰安婦』問題と関わることーできることを見つける旅」『戦争責任研究』(2017)「『他者化』しない姿を模索する ―日本軍「慰安婦」問題解決運動と吉見裁判―」 「歴史評論」 (2018)など
書籍:『社会学理論のプラクティス』くんぷる(2017 共著)、『ガールズメディアスタディーズ』(北樹出版 2021 共著)、『差別はたいてい悪意のない人がするー見えない排除に気づくための10章』(大月書店 2021 編集協力)、「右傾化・女性蔑視・差別の日本の「おじさん」政治」(くんぷる 2021 著者・編者)
研究情報 :https://researchmap.jp/HSRN
聡子の部屋:https://www.satokonoheya.com/
連絡先
ふぇみ・ゼミ事務所:〒115-0045 北区赤羽1-59-9 ネスト赤羽207
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